尚士会稽古日誌 基本の基本7 「演武試斬・成長」


前回、演武について大まかなお話を伺いましたが、さらに突っ込んだ話を先生お願いします。


今回は演武時の試斬について、人間の心理、斬り方、成長を少し話しましょう。(熊師範談)


前にもお話したように刀でモノを斬るには、体の力を抜き瞬発力で斬ります。小太刀同様手首の返し握り込み腰の回転これらを使って刀にスピードをのせます。なので力むと刀は失速してしまいます。ひどい場合は斬り損じてしまいます。また、右手を強く握り込むと刀の刃が働き刃筋が狂います。みなさんもやってみてください。


体の力を抜きターゲットの前後15度の間、瞬発力を使い刀を走らせればよく斬れます。斬った後は二の太刀に備え力を抜きます。上記の斬ることを念頭に置き、弟子達は演武で試斬を行うわけですが、ここで人間の心・気持ちが体の動きを邪魔するようです。おもしろいのが稽古中60点程度斬るが、演武では失敗に終わるケースが多いようです。


本人の心理状態は、演武・試合なので斬らなければならない、斬らなければ恥をかく、気負い、頭のどこかにあるようです。そのため体に力が入り刀が失速しているようです。かえって初段クラスの方が斬れたりします。初段クラスの心理状態は、斬れなくて当たり前、教わったことを素直に実行するだけ、なので迷いや、欲が無いようです。初段クラスでもいずれこの壁にぶつかることでしょう。


どんな道にでも乗り越えなければならない壁・障害はあります。そのため稽古をし、乗り越える努力をします。乗り越える壁は個人差があります。階段のようになっていますが、人の成長は階段ではありません。階段の一段の高さは同じですが、一段の幅は人によって違うようです。幅が長い人が一段を上がった途端二・三段と上がったりします。


この階段は自分で上がるしかありません。上がり方を指導することはできても上がるのは本人だからです。何事もそうですが、あきらめず根気よく楽しく長く続けることが大事です。